7. 防じんマスクQ&Amp;A

Q1 防じんマスクは、どうしても使わなければならないのですか?

A1 粉じんや溶接ヒュームが発生する環境で作業する人は、常に「じん肺」に罹患する危険にさらされています。「じん肺」は鉱山労働者などに多く見られる職業性疾病として知られていますが、いまも造船業や金属製品製造業、鋳物業などで新規有所見者が発生してる状況にあります。これは、いまだに多くの人々が粉じんを防止するためのマスクを使用しなかったり、使用しても国家検定外の性能の悪いもので代用しているせいだと思われます。
粉じん作業を行う事業者は、じん肺などの粉じん障害を防止するために「局所排気装置の設置」や「呼吸用保護具の着用」などが法律()で定められています。従業員の安全と健康を維持・管理する立場にある事業者は、必ず国家検定に合格した防じんマスクを着用するよう指導してください。
じん肺法、労働安全衛生法(粉じん障害防止規則)
Q2 「じん肺」とはどのような病気ですか?

A2 粉じんを長年にわたって吸い続けると、肺内に粉じんが堆積して、肺胞などの肺組織が固くなる繊維化を引き起こし、肺の役目を果たさなくなります。これが「じん肺」と呼ばれる疾病です。「じん肺」は、肺結核や続発性気管支炎、続発性気胸、肺がん()を誘発する恐ろしい病気。しかも、現代医学でも根本的に治療する方法はなく、一度かかると二度と健康な肺には戻らないといわれています。
さらに、「じん肺」の恐ろしさは、自覚症状が現れるまでに非常に時間がかかることです。有毒ガスのように吸入後すぐに自覚症状がでないだけに、対策を怠りがちになります。また罹患すると、粉じん作業を離れても病状が進行するケースが多々見られます。いま防じんマスクを正しく使用することが、将来の健康につながります。
厚生労働省によって設置された「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会」(座長・和田攻埼玉医科大教授)は、『じん肺患者は一般の人より3.7倍も肺がんにかかりやすい』という調査結果をまとめました。
正常な肺切片標本
正常な肺切片標本
じん肺罹患の肺
じん肺罹患の肺切片標本

Q3 「溶接ヒューム」って何ですか?「じん肺」と関係あるのですか?

A3 溶接作業は、約6,000度の高温の電気アークで金属を溶かして接合します。このとき、火花と一緒に発生する白い煙が「溶接ヒューム」と呼ばれるものです。溶接ヒュームの正体は、アーク溶接の際、金属の一部が気化して空中に飛び散り(=白い煙)、空気中で一気に冷やされた非常に細かい金属の粉じんです。 溶接ヒュームを吸い込むと、金属の微粒子が肺の奥まで入り込んで沈着。肺は次第にニカワのように固くなり、組織が破壊され、じん肺を引き起こします。溶接ヒュームによるじん肺罹患者は、じん肺所見者全体の約2割に上るといわれています。
産業構造の変化によって、「じん肺」の原因となる作業も粉じんの種類も変化しています。粉じんの種類や作業内容に応じて、国家検定合格の防じんマスクを使用してください。
●業種別じん肺有所見者数(単位:人)
じん肺有所見者数
厚生労働省「平成22年業務上疾病発生状況等調査」、第6表「業種別じん肺健康管理実施状況」より抜粋。